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手作り「風」の石けん?(某有名メーカーの石けんについての考察)

  • 執筆者の写真: pastel_carré
    pastel_carré
  • 2019年3月1日
  • 読了時間: 6分

~~手作り、保湿成分○○%、○○フリー、植物素材、オーガニック・・・などの表現に惑わされないために~~

「手作りの石けん」と言えば、石けん素地を作る段階から手作りというのが今までの常識だったように思いますが、最近は市販の商品で、それらとは異なる比較的安価な「手作りの石けん」を見かけるようになりました。

一見して、中和法の石けん素地で作られた石けんには無い手作りらしさがありますが、窯焚き鹸化法ともコールドプロセス製法とも見た目の質感が違います。

成分を見ると、「石けん素地・グリセリン・PG・ソルビトール・ラウリル硫酸Na・ラウレス硫酸Na」あたりが主になっています。「ラウリル酸ナトリウム」を含むということは石油由来の合成石けんです。自分の商品の良さを表現する手段として他の製品のデメリットを述べるのはあまり品の良いことでは無いので控えていたのですが、大手メーカー一社の独自の製品と思っていたところが、最近になって他のメーカーでも同じ原料の石けんを見かけたので、これからこのタイプが「手作り石けん」ということになるのではないかという危惧があり、敢えて書かせていただくことにしました。

表示指定成分のPG(保湿剤)というのは別名プロピレングリコールです。原液は猛毒ですが、微量であれば問題無いということで数多くの化粧品に配合されている成分です。こうした成分を一般の化粧品メーカーが使うことには特に何も言うことはないのですが、敢えて「手作り」と言っている製品に使われているということが私には引っかかってしまいます。ラウリル酸ナトリウムなどについても同様です。

そして、油脂から作られた脂肪酸ナトリウム(石けん素地)に、何故わざわざ石油系のラウリル酸ナトリウムやラウレス硫酸ナトリウム(パームオイルから合成される・脂肪酸ナトリウムと比較すると安価だが皮膚刺激が強い)を加えるのかという点が不思議でもあります。

推測になりますが、石けん素地をPGやラウリル酸ナトリウムと共に乳化させたところに、もう一度グリセリンを加えて透明石鹸の製造工程を施し、その工程の段階で手作り風のデザインなど施しているのではないかと思います。そうすると、不透明のようで薄っすらと透明感のある独特の質感にも納得がいきます。

最近は手作りの石けんを作っていると言うとこの大手メーカーの名前をあげられることが多く、「廃油で石けん作ってるの?」と言われていた頃よりはまあいいか、とは思っています。手作りで少し柔らかめの石けんということで、コールドプロセスの石けんがどの程度柔らかいのかを説明するのにわかりやすいと思い、一度購入して使用しました。

グリセリンを多く含んでいるようでやや柔らかめではありますが、乾いた状態になると表面が一般的な石けんと同じさらっとした質感になり、コールドプロセスのようにいつまでも表面にグリセリンが載ってややしっとりしているということはなく、しっかりとした質感という感じでした。季節によって変わるものなので真夏にまた使ってみないと何ともいえませんが。

ラウリル酸ナトリウムはできれば避けたいと思っていたところ、使用されていないものが何種類かあったのでそちらを購入しています。使用感は、市販のボディーソープなどを使うよりは良いかもしれないと感じました。ただ、私の場合には、おそらく香料が多いことが刺激になってしまったようで、体の柔らかい部分がピリピリする感じが翌日まで続いたため、以後使用していません。

私はどんな化粧品や石けんを使っても刺激を感じた経験は無いのですが、香料は、天然の香料でも化学香料でも油性なので、洗い流した後でも若干皮膚表面に残ります。若くて皮脂の分泌が多ければ徐々に自分の皮脂で薄まるのですが、どうも年をとるとなかなか薄まってくれないようです。

主にコールドプロセスの石けんを使い続けて、石けんの在庫不足時には洗顔用のみ確保し、体には長持ちする窯焚き鹸化法の市販石けんを使うことが殆どです。この使用感に慣れていると、石油系の石けんを使った時に皮膚の最表面よりもやや内部から皮脂が取り去られていく感じがはっきりとわかるようになります。様々な保湿成分の配合により、使用直後はしっとり感があるものが多くなっていますが、しばらくすると肌が乾燥していきます。

石油系の合成界面活性剤が肌の弱い人に合わないのは、皮膚への浸透性が高いことによります。皮膚のごく表面の酸化した皮脂や雑菌だけを落として欲しいところですが、より内部まで浸透するために必要な皮脂まで落とし肌を乾燥させてしまいます。乾燥した肌は皮膚を守ることができず、皮膚表面の良い働きをする微生物に栄養を与えることが出来ないため、様々なトラブルを引き起こす元となります。後から化粧水や乳液などで保湿するよりも、自らの皮脂が最も自分の肌に適した成分です。取り去りすぎてしまうと修復するために数時間かかります。

また、残念ながら、この時に購入したラウリル酸ナトリウムを含まないタイプの石けんについても皮脂を持っていかれる感じがありました。中和法の石けん素地の質は様々で、こちらはかなりさっぱりとした使用感になっているようです。ステアリン酸を多く含むオイル(ココナッツオイル、パームオイルなど)を主原料にした石けん素地の場合はさっぱりとした使用感になります。オリーブオイルの石けんがマイルドとされるのは人間の皮脂と同様にオレイン酸の含有量が多く(約70%)、ステアリン酸が3%程度と少ないためです。

ステアリン酸(など)が多いと固めのさっぱりとした石けんになり、オレイン酸(など)が多いとしっとりタイプの柔らかめの石けんになります。どのような製法で石けんを作る場合でも、このようなバランスが重要になります。

石けんの質は原料オイルの質とバランスによって決定します。人間の皮脂の脂肪組成を考慮し、適切なオイルを原料に作られた石けんは他に何も加えなくとも保湿力のある良質な石けんになります。「ヨーグルトが入っている」「はちみつが入っている」「◯◯エキス配合」など、オプションとして加えたものによって石けんそのものの質が上がることはありません。(石油由来の界面活性剤、アルコール、PGなどの刺激を一時的に和らげる作用はあります)

特に敏感肌で無ければどんな石けんを使ってもトラブルの起きることはありません。ブランドイメージや香り、価格などを基準に石けんを選ぶ楽しみを否定するつもりはありませんが、良質な石けんを使うと、洗顔だけで肌がしっとりと潤う力がより引き出されるようになります。とりあえず、手作り風の市販石けんと、石けん素地そのものから手作りされた石けんが別物であるということだけは知ってほしいと思ってこの文章を書きました。


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