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コールドプロセス製法の手作り石けんとは

  • 執筆者の写真: pastel_carré
    pastel_carré
  • 2019年3月1日
  • 読了時間: 9分

更新日:2020年5月26日

コールドプロセス製法の手作り石けんは、さっぱりとした洗浄力がありながらも使用感が穏やかで、洗浄後の肌や髪がそのままでしっとりと潤う良質な石けんです。

以前は、当店のお客様は「コールドプロセスの手作り石けん」についてある程度の知識がある方や口コミによるご利用が殆どだったのですが、最近はコールドプロセス製法の石けんについてご存知でないお客様も増えてきておりますので、一度まとめておこうと思います。(遅くなりましたが)

■石けんの原材料は油脂です

石けんの成分は、油脂から生成された界面活性剤です。

よく混同されるのですが、[界面活性剤=皮膚への刺激が強い]というのは一般的な合成石けんの成分である石油系合成界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウムなどの高級アルコール系界面活性剤他種類)のことを言っています。石油由来の界面活性剤は安定性が高く低コストで作ることができますが、皮膚への浸透性が高いため、必要な油分まで取り去ってしまう傾向があります。界面活性剤でない石けんはありません。(シャンプーやクリーム状の洗顔料などを含む)

植物性油脂や動物性油脂から作られた界面活性剤は、脂肪酸系の界面活性剤と呼ばれています。(脂肪酸ナトリウム)

この界面活性剤そのものが、良質な油脂を原料としてより良い状態で作られていることが使用感の優れた石けんの第一条件です。オプションとして加えられた植物エキスや○○(有効成分)配合などの点に目が行きがちと思いますが、石けんの使用感は原料オイルによって決定します。

当店の石けんは、オリーブオイルの他、スイートアーモンドオイル、マカダミアナッツオイル、ヘーゼルナッツオイル、アボカドオイルなどをベースオイル(70~85%)として使用しています。その他、石けんの泡立ちを良くしたり硬さを出す成分を多く含むココナッツオイル、パームオイル、シアバターなどの植物性バターやラードを25~30%配合します。さらに、ホホバオイル、未精製アボカドオイル、キャスターオイル、アルガンオイル(3~10%)などの特に保湿効果の高いオイルを加えたレシピの石けんもあります。

*その他、アミノ酸系と呼ばれる界面活性剤(アシルグルタミン酸、ラウロイルメチルアラニンNaなど)は主にパームオイルなどの油脂を原料に合成されたものです。洗浄力が弱めで低刺激になります。さっぱりとした使用感は得にくく泡立ちも控えめですが、特に肌の弱い方など低刺激を優先する場合に好まれます。また、美容院で販売されているシャンプーの多くがアミノ酸系界面活性剤です。価格が高くなるため、低価格の商品には泡立ちを良くするための添加物の配合などにより、逆に肌に負担をかけるものも多くあるようです。

■コールドプロセス製法とは

オイルに水酸化ナトリウムを加え、アルカリ反応させると脂肪酸ナトリウムとグリセリンが生成されます。この副生成物のグリセリン(保湿成分)を多く含むことで、保湿しながら洗浄する穏やかな使用感になります。水酸化ナトリウムそのものは分解されるので石けんには残りません。

コールドプロセス製法の特徴はその名の通り「冷製法」です。オイルを低温で扱います。(40度前後)

オイルを高温で熱すると酸化によって品質が劣化します。コールドプロセス製法はオイルを酸化させずにオイルそのものの良さを活かした製法です。

また、手作りの場合、原料オイルを100%石けんにせずに10%前後をそのまま石けんの中に残します。この余剰オイルが洗浄後の肌に薄い皮膜を作って洗浄直後の肌を乾燥から守ります。このため、しっとりとした潤いのある洗いあがりになり、洗いすぎやすすぎ残しが無い限り、洗顔後の肌が突っ張るようなことはありません。皮脂の分泌が活発な方の場合には化粧水や乳液がほぼ不要になります。(季節や肌の状態により調整して下さい)

コールドプロセス製法は伝統的な石けんの製法であり、使用感の優れた石けんを作ることが出来ますが、一般に市販品として流通している商品はごく僅かです。その理由としては、熟成期間を最低4週間以上必要とすることと、使用期限が2年程度と化粧品としては短いことがあり、結果的に高コストとなるためです。(大量生産の場合、風通しの良い場所に4週間の期間保管しておくことは場所代のコストがかかります。使用期限の過ぎた商品の廃棄も当然高コストです。)

また、コールドプロセス製法の石けんはグリセリンなどの不純物を含むため、比較的柔らかめの石けんです。固く泡立ちの良い合成石けんに慣れてしまうと扱いにくく感じるかも知れません。

質感などは異なりますが、市販の透明石鹸(グリセリンソープ)と同じくらいの硬さです。浴室で使用した後は浴室の外に出して石けんをよく乾かしておくと長持ちします。

泡立ちについては、そのまま水につけて手にこすりつけただけでぶくぶくと泡立つことはありません。石けん用の泡立てネットをご使用下さい。泡立てネットを使用するとキメの細かい十分な量の泡が簡単に作れます。手を逆さにしても落ちない濃厚な泡立ちですが、泡切れは非常に素早い良質な泡になります。

■その他の製法の石けん

長期間の熟成期間を短縮し、使用期限を長くした無添加石鹸の製法には、窯焚き鹸化法と中和法があります。

・窯焚き鹸化法

窯焚き鹸化法の石けんでは「アレッポの石鹸」が有名です。また、最近話題の「ガミラシークレット」も窯焚き鹸化法になります。

オイルを水酸化ナトリウムでアルカリ反応させる際に、文字通り高温で煮込むことにより鹸化を早めます。さらに、塩析という過程によりグリセリンその他の不純物を除去して純度の高い石けん成分(脂肪酸)を取り出します。手間のかかる工程になりますが、製造期間が短縮され、石けんの純度が高くなるため硬めの石けんになります。

良質なオイルを原料としている石けんが多く、低刺激で、つるりとした気持ちの良い洗いあがりです。グリセリンが除去されるているため、コールドプロセス製法と比較するとさっぱりとした使用感になります。

・中和法

油脂をあらかじめ脂肪酸とグリセリンに分解し、脂肪酸だけを抽出して水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムと合わせて中和させます。(酸とアルカリにより中和します)

不純物を含まない脂肪酸のみを使用するため、塩析せずに純度の高い石けんを大量生産することが出来ます。

市販の石けんで原料に「石けん素地(脂肪酸ナトリウム)」以外に香料や植物エキス、グリセリン(透明石鹸の場合)などのみの記載のあるものの殆どが中和法の石けんになります。原料オイルの種類の記載が無いため、製品によってかなり使用感が異なります。良質な脂肪酸が使われている石けんほど使用感が良く、価格も高価になっているようです。

中和法による石けん素地で作られた石けんの中には、合成石けんと同様の皮膚刺激のある石けんが多くあります。イメージ戦略として自然、天然、植物などと謳っているだけの化粧品メーカーが数多く存在していることを非常に残念に思います。

*低価格帯の透明石けんには石油系のグリセリンを加えているものがあります。

*石けん素地の原料となる油脂に石油系の鉱物油を使用している石けんもあります。

*石けん素地の他に「ラウリル酸ナトリウム」「TEA」などの石油系合成界面活性剤を加えた石けんもあります。(参考記事:手作り風の石けん?

(石油由来の成分の全てに問題があるということはありません。脂肪酸やグリセリンの場合、油脂由来のものと比較すると皮膚への浸透性が高いために肌への刺激が強くなります。逆にシリコンなど皮膚へ殆ど浸透しないものは刺激にはなりません。シリコンは網目状に皮膚表面を覆いますが、剥がれにくいという点で問題視されることがあります。皮膚呼吸を妨げるものでは無いので無害だという考え方もあります。)

■内から潤う素肌のために良質な石けんを

敏感肌の方など、肌にトラブルが出やすい方は化粧品の成分を考慮して化粧品を選ぶ傾向がありますが、そうでない場合にはあまり気にせずに価格帯や商品のイメージで選んでいても問題が起こることはまずありません。表示指定成分であっても安全性については研究されたものです。私の場合も化粧品によってトラブルが起こることは無かったので、「やはり高いものはいいけど、値段が10倍するから10倍良いってものでも無いな」くらいしか感じたことは無く、無添加というのは肌の敏感な方のためのものだと思っていました。

子供の頃から何故か石けんが好きだったのが高じて自分で石けんを作るようになりますが、そのシンプルな過程で作られた石けんは今までに使ったどんな高価な石けんよりも使用感の良いものでした。「これが本物の泡か」というきめ細かく滑らかな泡立ちで、天然のエッセンシャルオイルの香りも心地よく、洗うだけで肌がしっとりと潤います。その気持ちよさだけでも十分なのですが、使い続けることで自分の肌が常にベストな状態を保てていることを感じるようになりました。

色々な石けんの製法を知って感じるのは、その技術の殆どが石けんそのものの使用感を良くすることよりも、使い勝手の良い安定した均一の品質のものをより安い価格で大量に供給するためのものだということです。

中和法の石けんの製造過程によくある、オイルから生成される良質なグリセリンを取り除いて純粋な石けん成分を取り出し、そこにまたグリセリンを加えるというのは何だか不思議な気がするのですが、品質を安定させて使用期限を長くするためにはこの過程が必要になります。

成分が均一で安定し、安価に作ることの出来る石油由来の界面活性剤の場合、その使用感をマイルドにするために、色々な植物エキスを始めとした保湿成分を加えます。一般的な石けんやボディーソープが使用直後には肌がしっとりするのに、後から乾燥を感じるのはこのためです。一度肌から取り去った油分は表面を保湿してもなかなか元に戻りません。

良質な石けんを使い続けていると、自分の肌が本来持っている保湿力を取り戻します。どんな保湿成分よりも自分の体から作られる皮脂によって保湿されていることが一番です。「自分の肌は本来こんなにすべすべになる力があったのか」ということを実感していただけると思います。

追記:

私の場合は元々肌が丈夫なため、肌そのものに「劇的な変化があった」というほどのことはありませんが、髪には悩みが多く、石けんシャンプーによって大きく髪が変化しました。それについては下の記事に書きましたのでご参考下さい。



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